3週間くらい前になりますが、是枝裕和監督した映画『真実』観てきました。
是枝監督は、映画『万引き家族』の監督でもあります。
今回の映画『真実』の出演俳優の顔ぶれは驚異的!!
- カトリーヌ・ドヌーブ
- ジュリエット・ビノシュ
- イーサン・ホーク
日本人が監督する映画に、こんな俳優さんたちが出演してくださるなんて!
しかも前回の『万引き家族』同様、この映画『真実』も是枝監督オリジナルの脚本!
是枝監督に対する評価って高いんですね。
映画『真実』は通常編集版と特別編集版が上映されていましたが、
私は、時間の都合上、いきなり特別編集版を観に行きました(^^;
この度、映画『真実』“特別編集版”として、新たな本編を劇場公開することを決定いたしました。
国民的大女優の母と、その陰で複雑な思いを抱えて生きてきた娘。この母娘のドラマを描く本作ですが、“特別編集版”では、脇で彼女たちを支え、見守り、時にはさりげなく優しい的確なアドバイスを送る男性陣にも、よりスポットライトが当たります。
イーサン・ホーク他の出演シーンも盛りだくさんとなりますので、どうぞこちらのバージョンもお見逃しなく!是枝監督コメント
『「私家版」として友人に配るか「愛蔵版」としてDVD特典にするか悩んだ末に、周囲の方々の「せっかくなので」「こっちも好き」というお言葉に背中を押され、劇場公開させて頂くことになりました。イーサン・ホーク好きにはたまらない・・・はずです。どうぞよろしくお願いします。』引用元:https://gaga.ne.jp/shinjitsu/
映画のストーリ(軽くネタバレ)
世界的に有名なフランスの大女優が「真実」という名の自伝本を出版。
しかし、その自伝本には真実とは異なるエピソードが書かれており、
その本を読んだ大女優の娘は「真実とは異なる」と母を問い詰める。
娘は、今も昔も、母親業より女優業を優先し続ける母への複雑な思いを
母に直接ぶつける。
そんな衝突の中で、徐々に本に書かれなかった真実も明らかになり。
母と娘の関係は徐々に変わっていく。。。
という話。
映画の感想(軽くネタバレ)
感想1:その記憶、正しい?
映画の中で「その記憶、正しいのかしら?」的なセリフが何度か出てきたのが印象的でした。
私たちは「過去の出来事を多少歪曲させた形」でそれを『事実』として記憶に残し、
その『事実(=偽りの事実)』がしがらみとなって、今の自分を怒らせたり悲しませたり、
人間関係を必要以上に悪化させたりして苦しんでいる、
というような設定でした。
確かに、そういう一面はありますよね。
映画を観ていて、ドキッとしました。
感想2:見えているのは断片だけ
登場人物たちが映画の中で「自分が見聞きしたことが、事のすべてではないのだ(断片しか見ていなかった、断片しか知らなかったのだ)」と気づく場面も何度かあり、それも印象的でした。
どうしても、人は物事を一方的に見てしまいがち。
そして、それがすべてだと思い込む。
「客観的に、俯瞰的に」といいながら、それでも、自分色に染まったレンズを通して物事を見てしまう。
いや、見てしまうんじゃなくて、主観的にしか物事を見れないものなのかもしれません。
映画『真実』の中では、そんなことから親子関係で確執が生じていましたが、
一方的な偏った見識は、友人、職場、国会など、ありとあらゆる場面で発生することだと思います。
そんな時、自己の一方的な思いだけを相手にぶつけても、相手は違う目線で見ているのだから意見が一致するわけもなく。
そんな中で、どう、すり合わせをしていくか。
映画の中にも描かれていたように、やはり、自分を素直に話して相手を素直に受け止めて、
相手の目線で物事を見直してみようとすること(=試してみること)が必要だと。
そんな風に思いました。
是枝監督は意図をもった映画作りをしない方のようなので。
情景だけを描きそこから何を感じるかは観客に任せるような作品を作る方のようなので。
私が感じたような意図があるのかないのか分かりませんが、
そんなことを思いました。
感想3:幸せそうに見える家族も問題を抱えている
大女優の娘は、結婚して子供が一人います。
優しい旦那様とかわいい一人娘。
一見すると、すごく幸せそうな家族ですが、
実は娘の旦那さんは問題を抱えていて、
それを抱えながら夫婦でバランスをとりながら生活している、
ということがにじみ出てきます。
「隣りの芝生は青く見える」。
そんなことわざを思い出しました。
若い頃は、周囲の人の方がイイ人生を送っているように見えて、絶望して、
あーだこーだと色々と思い悩んだものですが。
50近くになると、諦めというか開き直りというか
自分を受け入れられる心が広い人間に成長したというか(笑)
悩みも減ります。
人それぞれ、色々あるけど、まぁ、何とか折り合いをつけて生きている。
ってことでしょうかね(^^;
感想4:一瞬ドキュメンタリーに思えた是枝監督の演出
「これ、カトリーヌ・ドヌーブの日常を描いた映画なのかな?」と、
映画を観ていて錯覚した瞬間が何度かありました。
けれど、どこかのインタビューで「実際の私とは違う」と言っていましたから。
違うのでしょう。。。(^^;
それくらい、演技が自然に見えました。
イーサン・ホークの亭主っぷりも、超自然体に見えて。
子役と接している時の、妻思いのパパっぷりがとても素敵でした♥
是枝監督が演出すると、言葉の壁を越えて演技が自然体になる、ということなのでしょうか。
すごいな、是枝マジック。
感想5:皴があってもいいんじゃない!
ストーリーとはまったく関係ありませんが。
カトリーヌ・ドヌーブ(76歳)、ジュリエット・ビノシュ(55歳)が素敵でした♪
素晴らしい~♥
カトリーヌ・ドヌーブは、皴取りなどの整形も一切せず、ありのままの自分でいることにこだわり続けるフランスの女優さん。
30年くらい前に映画館で観た映画『ロシュフォールの恋人たち(1967年の大ヒット映画)』では、スクリーンの中で若く生き生きと踊り歌う姿が、かわいく美しく魅力いっぱいでした。
2002年の映画『8人の女たち』では圧倒的な熟女の貫禄。
そして、今は更に円熟した堂々とした魅力が圧巻でした。
76歳ですから、皴もある。たるみもある。体形も崩れている。
それでも漂う気品がゴージャスで美しい。。。♥
人は永遠に同じじゃなくて。
しわが増え、シミができ、体形が崩れて変化する。
今、日本ではそれを「劣化」と表現する。。。
それも、男性には使われず、女性に対してだけ。
今の日本には「美魔女」という言葉があり女性への誉め言葉として使われます。
女優の中谷美紀さんが「日本は『常若』の国」と言っていたのを思いだしました。
『常若(とこわか)』。それは、常に若々しくみずみずしくあり続けること。
それを望む傾向が強い国。
特に女性に対する思いとして強く残っているみたいでね。
女性自身も、そう思っている節(ふし)があります。
『常若』の価値観は、日本人の根底に、遺伝子に刻まれているのかもしれません。
だから、年齢不詳の大人女子への誉め言葉として「美魔女」という言葉があるのでしょう。
魔女というぐらいですから、「たぐいまれ」であるという認識もあるようですが、
それにしても、消耗品みたいなに「劣化」というのはひどい話です。。。
日本の女優さんなら、大写しは禁止で、強いライトとお化粧で、
懸命に皴を隠そうとするのだろうなぁ。。。
でもね、映画『真実』では、カトリーヌ・ドヌーブもジュリエット・ビノシュも、
大写しが何度かあり、口の周りの細かい皴、大きな皴が映っていましたが、
そのままに、表情豊かに演じてました。それがとても美しかった♥
カトリーヌ・ドヌーブがパジャマ姿でスクリーンに出てきたときには、
「あの大女優がふくよかな体形のパジャマ姿の撮影をOKにしたの!?」と
一瞬たまげましたが。
リアリティー、いっぱい(^^♪
ステキでした(^^♥
皴いっぱいでも、シミができても、体形が崩れても、
自然な変化を受け入れつつ 気品があるおばあちゃんになりたい。
映画を観終わって、そんなことを思いました(^^♪
最後に
映画の最後の最後に、母親であるより女優である母の性(さが)に対して、あきれながら温かい眼差しを向ける娘の姿があり、とても印象的でした。
あのシーンが、この映画のまとめなのかなぁ?
そう感じました。
映画『真実』には劇中劇があって、ちょっと不可思議な感じが残る映画です。
まあ、そこはあまり気にしないようにして(^^;
「カトリーヌ・ドヌーブの日常を垣間見れた」。
そんな錯覚と満足感が得られた映画でした。
ぜひもう一回、何としてでも映画館で観たい!
とまでは思えないけど(笑)、満足できた映画でした。
カトリーヌ・ドヌーブは とにかく美しい~\(^o^)/
ジュリエット・ビノシュも飾らぬ魅力が素敵でした♪
おまけ
映画『真実』の出演俳優、Roger van Hool(ロジュ・ヴァン・ホール)が印象に残っています。
大女優の長年の付き人役を演じてました。
名前を知りたくて、あっちこっち調べました。
渋くてジェントルマン。カッコ良かったわ~♥
写真は MUBI からお借りしました。