「国宝 鳥獣戯画のすべて」展に行ってきた

上野にある東京国立博物館で開催されていた特別展「国宝 鳥獣戯画のすべて」展に行ってきました。

コロナ禍の緊急事態宣言発動中のため開催が一時休止となり、そのまま終了してしまうんじゃないかと気がかりでしたが、入場者数を制限して会期を3週間延長して再開されての開催でした。

今回のお目あて

実は、ワタクシ、鳥獣戯画所蔵の高山寺 金堂のファンでして。

今回の目玉は、鳥獣戯画 全4巻を一度にすべて見れる!ということでしたが、鳥獣戯画にはあまり興味がなく(^^;

お目当ては別にありました。

『明恵上人坐像』

高山寺 公式サイト(明恵上人)から借用 

その高山寺の開祖と呼ばれる 普段は非公開の『明恵上人坐像』が28年ぶりに寺外で公開される、ということで、それが一番のお目当てでした。

『明恵上人坐像』は実寸大でしょうか。素朴で実直で、それでいて芯が強い。そんなお人柄だったのかな?と思うようなお姿で。まるで生きているような、というのは大袈裟だと思いますが、でも、そう言いたくなるような座像で、感無量。

また、展示の仕方がとても良くてね。『明恵上人坐像』にだけ集中せざるを得ない配置と空間演出で。

更に、少し離れていたけれど、『明恵上人坐像』の真正面に座って拝める穴場スポットを発見!

暫く眺めさせていただきました(^^♪

今回の大発見!

(NHKニュースで報道されたようですが。。。)

今回の展示に先立ち、東京国立博物館がCTスキャナーを使って『明恵上人坐像』の内部を調べてみたら、座像の中心部に巻物が納められているのが初めて確認できたそうです。

恐らく、座像を制作した時に納められたんだろうとのことですが、座像の底の部分にはしっかりと栓がされており、巻物が取り出せるようになるのは当分先になるだろうとのこと。

何が書いてあるんでしょうか。

鳥獣戯画を書いたのが明恵上人だった、なんて書いてあったら面白いですね。

私はね、明恵上人が関わっていると、ちょっと思っています(笑)

NHKニュース(国の重要文化財「明恵上人坐像」の内部に巻物発見) 

『子犬像』

高山寺 公式サイト(国宝・重要文化財)から借用 

で、次に見たかったのは、『子犬像』。

この時期に製作された犬の木製の彫像って珍しいらしいんです。

明恵上人が仏師に頼んで作らせて明恵上人が愛玩していた、とされているそうです。

これは、高山寺に行けばいつでも身近に見れますが、久しぶりに見たかったのね。

でもね、今回の『子犬像』なんかいつもと雰囲気が違っていました。

高山寺ではケースに入って畳の上に置かれていて、なでることが出来そうなくらいの位置で間近で見られてかわいいのですが、今回ここ国立博物館では黒い暗い場所でスポットライトあてられてポツンと一人(一匹)置かれていて、まるで囚人か見世物みたいでね。

クウ~ンと泣いていそうな感じがして、気の毒でした。

こんな感覚にさせられるのも、『子犬像』が愛らしく、感情移入してしまう程見事だからなのだと思います。

ところで、鳥獣戯画は?

「国宝 鳥獣戯画のすべて」から借用 

今回ワタクシ、鳥獣戯画にはあまり興味が無いのに鳥獣戯画展に行ったわけですが。

実物を見てみて、すっかり魅了されてしまいました。

まさに、「鳥獣戯画はスゴイ!」。この一言に尽きます。

作者不明、目的不明、と言われている鳥獣戯画ですが、4巻あります。複数の作者が別の年代に書いたという説が、今は有力になっています。

今回、全4巻、すべて見ることが出来たのですが。

書いた人の画力は凄いのなんのって。

迷いなくスラスラと書いているのが、伝わってくるのです。

今の時代、こんなに細やかに書ける水墨画家って、どれくらいいるだろう。

そんなことを考えながら、思わず見入ってしまいました。

昔も、鳥獣戯画は人気だったようで、武家が鳥獣戯画を見て写し書かせた『鳥獣戯画の模本』と呼ばれるものも今回複数展示してあったのですが。

『鳥獣戯画』と『鳥獣戯画の模本』ではぜんぜん筆の運びが違っていて、『鳥獣戯画』の表現力の凄さを今回ひしひしと感じました。

巻物は巻物で見るのがイチバン

私たちが普段目にする鳥獣戯画は、巻物のワンカットでしかありません。

本にしても紙芝居にしても、必ず横幅が決まっていてそのサイズでカットされ途切れてしまい、続きを見るごとに、いったん 思考や視界、世界観が途切れてしまいます。

今回の展示は、一巻きを全開して展示してくれていて、最初の部分から最後の部分まで流れるように見ることが出来る展示になっていました。

この見方で見ると、特に鳥獣戯画(甲巻=第一巻)のすばらしさが良く分かります。

鳥獣戯画(甲巻)は単に横に長~い絵ではなく、その長い長さの中に時間の流れ、物語の流れが演出されていることに気付きます。

それは、一種のアニメーション。一種のショートストーリー。

これには驚きました。

これはね、行って見てみないと気付けない感動でした。

ここ欲しいから ちょうだい!by 武家

wiki「鳥獣戯画」から借用 

昔も、鳥獣戯画は人気だったようでして、どういうわけか鳥獣戯画の一部が切り取られて掛け軸にされたみたいなんです。

鳥獣戯画を見ると、「高山寺」という赤字の印がいっぱい押されているのですが、これは「もうこれ以上 切り取られてなるものか!」と紙の継ぎ目や絵の区切りに高山寺が押印したそうなんです。

で、なんで切り取りが発覚したかというと、『鳥獣戯画の模本』にあって『鳥獣戯画』にない部分がいつくか見つかりまして。

一方で、「これ、鳥獣戯画に似てる気がする!」って調べてみたら、紙質と紙の年代、描き方、構成から判断して、鳥獣戯画と一致していて、今は、鳥獣戯画の一部であった、と断定された掛け軸があるそうです。

それも、今回展示されていましたね。

これ、『断簡』というそうです。

果たして、武家が言いだしたのか、それとも高山寺が提案したのか。

真相は闇の中です(笑)

まだ見つからない断簡もあるのだとか。

見つかるといいですね。

行って良かった、鳥獣戯画展

コロナ禍でなかったら、たくさんの人が見れたであろう、鳥獣戯画展。

入場者制限があったから、館内は展示物の前に人の列の1列出来ているだけで、ガラガラでした。

2019年の『国宝 東寺-空海と仏像曼荼羅』に比べたら、館内は本当にスカスカ ガラガラでした。入場者制限が無かったら、きっと4倍かそれ以上の人が見れたと思います。

会期も短くなって、ホント、お気の毒。

今回の『国宝 鳥獣戯画のすべて』展は、新型コロナさえなければ、本当は昨年 8月に開催する予定だったんだそうです。

それが延期になって、やっと開催出来たと思ったら、中断して。開催日数も来場者数も激減してしまいました。

実は、鳥獣戯画所有の京都 高山寺は、2018年9月の台風で被害総額 4億8千万円という甚大な被害を受けております。幸い、仏像などの宝物は無事でしたが。

これは、2018年9月 の台風被害の様子。
お釈迦様が祀られている金堂の屋根の上に杉の樹が何本も倒れ込んでいます。

台風被害の前の高山寺 金堂
(撮影:2018年2月 )

今回の展示会の集客が多ければ、多少、収入アップにつながって復旧の助けになったのではないかと、つい考えてしまいます。

博物館の中に復旧支援の募金箱があるかなー、と思って用意して行きましたがありませんでした。

代わりに、人目の付かないところに ひっそりとひっそりと『支援のお願い』が置いてありました。

台風21号による境内被災のご報告と復興へのご支援のお願い

謹啓皆様には平素より当山への温かいご理解とご支援ご協力を賜り、厚く感謝申し上げます。
平成30年9月4日の台風21号は、各地で多くの被害をもたらしました。
当山におきましても、仏像等の宝物や国宝石水院は無事であったものの、樹齢100年以上の大木を含む200本以上の倒木、金堂・開山堂・仏足石の損壊、石垣や地盤の崩落等の甚大な被害を受け、今なお復旧が困難な状況です。
関係者一同、一刻も早い復旧のため全力で取り組んでおりますが、まだまだ前途多難で多くの力不足を乗り越えていかなければならないところです。
そのため、ここに広く皆様方の浄財を賜りたくご寄付のお願いをする次第でございます。
かけがえのない世界文化遺産を未来に引き継ぐため、なにとぞ皆様のご賛同を仰ぎ、温かいご支援を賜りますようよろしくお願い申し上げます。

謹白
栂尾山 高山寺
山主 田村恵心

【ご支援金振込先」 ゆうちょ銀行
支店448 ・普通・口座番号3250841

栂尾山高山寺(トガノオサンコウサンジ)

おまけ

鳥獣戯画、書いてみました。なぞり書きです。

なぞってみてわかる、画力の高さ。

墨で和紙に描く、ですからね。墨だまりを作らずに描く技量が凄いと思う。

それにね、短い線をサササッと入れて書いてあるところもあって、凄いの一言。まさに神業。

私が一番好きな絵は、コレ。

カエルの菩薩に、サルの僧侶。

これほど馬鹿げた話はナイよね、ってんで、お気に入りです(^^♪

しかもサルの僧侶の読経は、熱気を帯びているし。

(多分、口元のモヤモヤは熱気を表現してるよね。)

おしまい。。。(^^♪

▼ 「鳥獣戯画」所蔵の京都 高山寺の御朱印帳の話

京都 高山寺の御朱印帳
京都 高山寺の御朱印帳を調べていて、ちょっと疑問に思いました。 私が持っている 高山寺の御朱印帳が インターネット上に 2件しか出てこないんだけど、なんで....

▼ 「鳥獣戯画」展のチケットが買えなくて凹んだ時の話

♪ 曲がりくねった道/from セイクレッド トラベラー オラクルカード
昨日、ショッキングなことがありました。まるで財布を落としたような落胆と後悔を味わいました。今も記事を書きながら思い出して、ショックで目がウルウル。あまりのショッ....

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